この入院基本料に加えて医療器材や医療スタッフを充実させると上乗せできる加算などもあるので、実際の医療費はこの金額にはならないことが多いが、いずれにせよ手術や化学治療など高度な医療を行う大病院では2週間以内に患者を退院させて、次々と新しい患者を受け入れたほうが高い診療報酬が取れる仕組みになっている。

 さらに、7対1入院基本料を取りり続けるには、入院患者の平均在院日数は18日以内で重症患者が全体の15%という条件がある。これを満たさないと、高い診療報酬を取れなくなるため、冒頭のAさんのケースのように、手術など高度な治療が終わった段階で、完治していなくても次々と退院させられるというわけだ。

切れ目のない医療に必要な
入院計画が形骸化している現状

 病気が治って晴れて退院できるならいいが、Aさんのように体に慣れない管をつけたまま、突然、退院を言い渡される患者は不安だろう。しかし、国が入院日数の削減を打ち出したのは、たんに医療費を削りたいというだけではない。背景には2025年問題がある。

 2025年になると、いわゆる団塊の世代が後期高齢者(75歳)になり、認知症などで介護が必要な人が増えることが予想されている。年間死亡者数も、現在の約120万人から約160万人になる見通しだ。

 現在、日本では8割を超える人が医療機関で亡くなっている。このままの構造が続くと、2025年には病院のベッドは終末期の患者で埋め尽くされ、本来の病院が行うべき手術や救急患者の受け入れなどができなくなってしまう。

 そこで国は、大病院では高度な医療を担当し、中小病院や診療所は生活習慣病や慢性期の治療を行うなど役割分担を明確にし、地域で連携を取りながら切れ目のない医療を提供できる体制作りを急いでいる。

 それを実現するには、Aさんのようにがんの手術などを受けた患者は、本来なら入院中から退院後の療養生活を見据えて、地域の診療所や訪問看護ステーションを紹介するといった診療計画を立てなければならないはずだ。