「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず」から始まる『方丈記』(写真はイメージです) Photo:PIXTA

レビュー

 自然災害、新型コロナウイルスの流行、経済に対する不安など、今、さまざまな困難を目の当たりにし、先の見えない時代を憂慮している人も多いだろう。そんな現代人にこそ、本書『方丈記 不安な時代の心のありかた』から、『方丈記』の学びを受け取ってほしい。

『方丈記』の著者である鴨長明が生きたのは、現代と同様、とても不安定な時代だった。養和の飢饉をはじめとする五大厄災や、保元・平治の乱、壇ノ浦の合戦などといった歴史的な大事件も多く、社会が大きく変わった時代である。また、長明自身の人生も変化の激しい劇的なものであった。

『方丈記 不安な時代の心のありかた』書影
『方丈記 不安な時代の心のありかた』 前田信弘編訳 日本能率協会マネジメントセンター刊 1760円(税込)

 本書の編訳者である前田信弘氏は、『方丈記』の長明のあり方やその言葉から、先の見えない不安の多い現代人に、「直面する目のまえの現実にあわせて、ゆらぐことも必要なのかもしれない」と言っている。仏教では、世は無常であり、同じ事態は二度と来ないとされているそうだ。先のことはわからないのだから、ゆらぎながら、そのときの最善を模索していくべきだということだ。

 本要約では、『方丈記』の中から、養和の飢饉の様子や長明の晩年の生活をまとめている。長明は、恵まれた家に生まれたにもかかわらず、晩年は、粗末な衣服や粗末な食事を選び、小さな家に暮らしていた。その姿は、他人からは哀れに見えるかもしれない。しかし、長明自身はその生活を非常に楽しんでいたようだ。他人の目よりも、「自分がどうありたいか」を大切にしていたのである。

 これから自分がどう生きていきたいのかを、あらためて考えさせられる一冊である。(中山寒稀)