それまで横柄だった患者さんが、これまでとは打って変わって急に優しくなったりすると、「もしかして、そろそろかも」と思ってしまうことがあります。

「あの人が、『ありがとう』って言ったよ」

 そう看護師の間でうわさになることもあります。

 おそらく最期は、いちばん弱っている時期なので、どんな人でも他人の優しさを感じやすくなるものなのでしょう。

 だから、「ありがとう」と素直に口にしてくれるのかもしれません。

 ですから、最期まで嫌な感じの人だったという患者さんの記憶が思い当たらないのです。

(※本稿は、後閑愛実・著『後悔しない死の迎え方』から再構成したものです)