論理学を体系化したアリストテレス
――プラトンの主宰するアカデメイア(プラトンが建てた学園)で才能を開花させたアリストテレスは、どのような哲学を持っていたのですか?
出口:プラトンと比べると、とても実証的です。プラトンのイデアは、観念上の直観です。ロジックで「イデアがある」と論証しているわけではありません。「世界にはイデアがある」ということを前提として、論理を展開しています。「洞窟の比喩」はわかりやすいのですが、なぜイデアがあるのか、その点が論証されていません。「神の世界にイデアがあった」という前提から論理が始まります。
一方のアリストテレスは実証的であり、経験論を大切にしました。
さまざまな経験の中から真実を導き出すために、アリストテレスは経験による結果を分析し、理論化することを重視しました。そのために論理学を体系化しました。
たとえば三段論法があります。「AはBである、BはCである、それゆえCはAである」という論理展開です。もしかするとアリストテレスは、師であるプラトンの直観についていけない自分に悩んでいたのかもしれません。
イデア論がなんとなくピンとこない……そんなところから、自らの方法論として論理学を大切にしていった、とも推察できます。
ソクラテスは人間の内面に思索の糸を伸ばし、プラトンは哲学の問題提起を数多く行いました。それに対してアリストテレスは、政治、文学、倫理学、論理学、博物学、物理学など、あらゆる学問領域を対象とし分類と総括を行なっています。その意味でもまさしく万学の祖でした。
アリストテレスについてもう少し勉強したい人は、『ニコマコス倫理学』(高田三郎訳/岩波文庫、全2冊)や『形而上学』(出隆訳/岩波文庫、全2冊)と『世界の名著8 アリストテレス』(田中美知太郎責任編集、中公バックス)から始めることをお薦めします。
過去の僕の『哲学と宗教全史』全連載は「連載バックナンバー」にありますので、ぜひご覧いただき、楽しんでいただけたらと思います。
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