将来のことを不安に思い、副業で収入を上げ、蓄えを増やそうと考える人が増えているようです。国も副業を勧めるようになっていますし、休日を増やして社員の副業を容認する企業の話も聞くようになりました。副業で副収入を得ることは、本業や生活に悪い影響が出ない範囲で行うのであれば、良いことに思います。ただ、どのようなことを副業とするのかは、慎重に考えたほうがよいでしょう。副業がもとで、期待していた将来の蓄えが全くできないなどという、本末転倒な結果になる可能性もあるのです。(家計再生コンサルタント 横山光昭)
副業を始めたが、もうからず
逆に経費がかかっている
関西方面にお住まいの会社員のTさん(52歳)は、妻と4年ほど前に死別し、社会人の娘(25歳)と二人暮らし。妻の闘病で貯金をかなり使ってしまい、現在の貯金は400万円ほど。55歳になると役職定年となり収入が減りますし、定年になっても退職金はあまり期待できないそうです。
ただ、今の会社はとても恵まれた待遇で、定年を迎えても65歳までは再雇用として、それ以後は75歳までパートで働くことができるのだそう。年金と給与収入を合わせると、75歳までは生活できる収入がある環境ができています。
それでも、貯金が今のまま増えないのは不安です。そこでTさんは、今からでも長く続けられる「副業」をしようと考え始めました。ですが、それでも貯金は一向に増えない。そう悩んで家計相談に来られました。
家計状況をうかがうと、まだ削減できそうな支出はありますが、多すぎると思える生活支出はありません。しかし、毎月の収支はトントンという状況。なぜだろうかと考えていたところ、Tさんが「副業に経費がかかっている」ことを教えてくれました。副業による収入はないのに、です。