【韓国(済州)】2019年秋のある日曜の午後、中国深圳市でキリスト教信者が狭いオフィスの一角に集まり、人生最大とも言える決断について話し合っていた。中国にとどまるべきか、それとも韓国に亡命すべきか。

 2012年に創設されたこの「深圳聖改革派教会」は無登録の「ファミリー教会」で、中国当局は違法だとみなしている。メンバーは政府から何年も嫌がらせを受けていた。政府の圧力にもう耐えられないと感じているメンバーもいた。

 約50人による協議は3時間余り続いた。子どもが今後も宗教教育を受けられるよう中国を離れることを望む声もあれば、職が見つけられるか、中国に強制送還されないかといった懸念も上がった。参加者は感情が高ぶり、多くが涙を流したと当時を振り返る。

 翌週の日曜日に再び会合を開き、採決が行われた。結果は賛成56、反対17。亡命を支持する声が圧倒的だった。

 習近平国家主席が実権を握って以降、中国共産党はビジネスから宗教まで社会のあらゆる面で統制を強化し、反体制派への弾圧を強めている。当局の締め付けが要因となり、国外へ逃れようとする中国市民が増えつつある。

中国から逃れるキリスト教徒、脱出後も苦難の道メンバーの多くは韓国語が話せないため、収穫など単純作業に就いている PHOTO: JUN MICHAEL PARK FOR THE WALL STREET JOURNAL