『独学大全──絶対に「学ぶこと」をあきらめたくない人のための55の技法』20万部を突破! 本書には東京大学教授の柳川範之氏「著者の知識が圧倒的」独立研究者の山口周氏「この本、とても面白いです」と推薦文を寄せ、ビジネスマンから大学生まで多くの人がSNSで勉強法を公開するなど、話題になっています。
この連載では、著者の読書猿さんが「勉強が続かない」「やる気が出ない」「目標の立て方がわからない」「受験に受かりたい」「英語を学び直したい」……などなど、「具体的な悩み」に回答。今日から役立ち、一生使える方法を紹介していきます。
※質問は、著者の「マシュマロ」宛てにいただいたものを元に、加筆・修正しています。読書猿さんのマシュマロはこちら

「職場で上司から人格否定をされたとき、どう言い返すべきか」への納得回答Photo: Adobe Stock

[質問]
 どうしたら上手に怒ったり、言い返せたりするのでしょうか?

 人からひどいことを言われたり、されたりしても、上手く言い返したり、怒ったりすることができずにとても悩んでいます。

 職場で上司や先輩社員から人格を否定されることを言われても、ほとんど「すみません」や「(ご指導いただき)ありがとうございます」としか言えません。ごくたまに反論してみても、「屁理屈」や「揚げ足をとるな」、「あなたの考えはそもそも間違っている」と退けられ、相手がイライラしてきていることがわかるので、そのまま私が引いて終わりにしてしまいます。

 周りの人に相談したところ、「あまり気にするな」、「怒らないから舐められるんだ。言い返せ」と助言いただきました。しかし、毎日顔を突き合わせて報連相などコミュニケーションをとる必要があるため、言い返した後の報復が怖く、仕事を教えてもらえなくなるのではないか、嫌がらせされるのではないかと不安になり、実行することができません。

 アサーションの考え方も学びましたが、これもうまく行えません。

 1年以上、この状態が続いており、大変つらいです。最近は、上司たちの発言が、より一層ひどいものになってきている気さえしてしまいます。どうしたら上手に怒ったり、言い返せたりするのでしょうか。

あなたに必要なのは気の利いた言い回しではなく、ICレコーダーです

[読書猿の回答]
 あなたに必要なのは、気の利いた言い回しでも上手に怒ることでもなく、ICレコーダーだと思います。人格否定的な「指導」を受けたら「ご指導いただきありがとうございます。繰り返し聞いて魂に刻み込みたいので、今のをもう一度言ってくださいませんか」とICレコーダーを見せてお願いしてみてはどうでしょうか。上司や先輩があなたの成長を願っていて、自分でも正しいことを言っていると思っているなら喜んで録音させてくれるでしょう。しかしおそらくそうはならないでしょう。

 今のが難しいなら(多分難しいと思います)、内緒でICレコーダーを1日中作動させて録音し続けるだけでもいいです。

 そしてひどいことを言われたら、ハラスメントに対応する部署へデータを提出して相談しましょう。社内になければ(あっても信頼できない場合や、ちゃんと対応してくれない場合は)外部の相談窓口を探してください。

 人間は度し難い生き物であり、相手が反撃をしてこないと思うとどこまでも残忍になる場合があります。そして、言葉で人格を否定され続けることは、殴り続けられるのと同じくらいあなたの魂と脳を損傷させます。速やかな対処を。いずれにせよ、あなたが犠牲になる理由は何もありません。