米国の景気は、新型コロナウイルスの流行を受けて後退した。だが、国民は貧しくなるどころか、多くの人が豊かになっている。米連邦準備制度理事会(FRB)によると、家計資産は昨年、13兆5000億ドル(約1494兆円)増と、30年ぶりの伸びを記録した。あらゆる層の米国民がクレジットカードの負債を返済し、貯蓄を増やし、低金利の住宅ローンに借り換えた。これは過去の不況時とは異なる。例えば2008年、米家計資産は8兆ドル減少した。コロナによる景気後退――そして回復も――の特異性はある意味、驚くべきことではない。コロナ流行は現代において未曾有(みぞう)の規模だったからだ。それ故、米政府の財政対応も異例だった。景気がこれ以上落ち込まないよう数兆ドル規模の手を打った。