ビール製造世界最大手アンハイザー・ブッシュ・インベブ(ABインベブ)の幹部は3月下旬、あるプロジェクトに取り組んでいた。そのコード名は「欧州連合(EU)」と「euphoria(高揚感)」を掛け合わせた「EU-phoria(ユーフォリア)」。英国を皮切りに数週間後に欧州の多くの国で飲食店の屋外営業が再開されることになっていた。ABインベブのデータ科学者たちは、数カ月にわたるロックダウン(都市封鎖)が開け、人々が友人や家族と再び集い始め、ビールの売り上げが急増すると予測した。インドのバンガロールでABインベブの解析部門を世界的に統括しているマニンダー・シン・グレワル氏(38)も、需要回復への期待に満ちていた。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が発生した際、約70人で構成される同氏のチームの仕事はビールの販売や供給を予測することから、世界各地でコロナ関連の規制がいつ、どこで緩和または強化されるかを予測することへとシフトした。