富山市の富山地方鉄道で昨年7月に起きた脱線事故で、国土交通省の運輸安全委員会は鉄道事故調査報告書を公表した。その中身からは、地方私鉄の経営苦境が続く中で、設備投資や人員増強などによる安全対策が十分に行われていないことが浮き彫りになった。コロナ禍で経営はますます苦しくなる中、このままでは各地で第二、第三の富山地方鉄道が生じかねない。(鉄道ジャーナリスト 枝久保達也)
昨夏の脱線事故の
調査報告書を公表
国土交通省の運輸安全委員会は6月24日、富山地方鉄道で昨年、発生した脱線事故の鉄道事故調査報告書を公表した。
事故が起きたのは2020年7月26日のこと。上市駅発電鉄富山駅行き2両編成の上り普通列車が、東新庄駅出発後の左カーブを時速約34キロの速度で走行中、運転席の真下から「ガタン」という衝撃を感じたため、非常ブレーキを使い列車を停止させたところ、車輪が脱線しているのが確認された。乗客31名および運転士に負傷者はなかった。
報告書は事故原因について、列車がカーブを通過中、レールの幅が大きく拡大したため、車輪がレールの間に落下したことによるものと考えられると結論付けた。