米国の現代史上最も大きな富の移転が始まった。
米国のベビーブーム世代以上の高齢者は、数十年にわたり莫大(ばくだい)な資金を蓄えてきた。米連邦準備制度理事会(FRB)のデータによると、2021年第1四半期(1-3月期)末時点で、70歳以上の米国人の純資産は35兆ドル(約3900兆円)近くに達している。これは、米国の全純資産の27%に相当し、30年前の20%から増加している。また、対米国内総生産(GDP)比では157%と、30年前の2倍以上に達している。
彼らが今、その富を相続人などに分配し始めており、住宅購入や起業、慈善事業への寄付などの経済活動を一気に解き放っている。そして、その富を受け取る人の多くは、与えた人とは異なる優先順位や政治を指針にしている。
調査・コンサルティング会社セルリ・アソシエーツによると、2018~42年に高齢者世代が引き渡す資産は約70兆ドルに上る。そのうち約61兆ドルはミレニアル世代やジェネレーションX世代を中心とした相続人に渡り、残りは慈善事業に流れる。ベビーブーム世代は第2次世界大戦後の繁栄の中で成人し、人生のさまざまな段階を通して経済をけん引してきたが、この富の移転はベビーブーム世代の経済力の大きさを改めて示すことになる。
米銀大手キャピタル・ワン・ファイナンシャルのエコノミストがFRBのデータを分析した結果によると、2019年の平均相続額は21万2854ドルで、1998年の14万6844ドル(インフレ調整後)から45%増加した。