最近の米国における電気自動車(EV)新興企業ブームの最大の恩恵を受けているのは、意外にも世界最大の石油輸出国である。サウジアラビアは米EVメーカー、ルーシッド・モーターズへの29億ドル(約3200億円)の投資により、200億ドル近い利益を手にすることになる。サンフランシスコのベイエリアにあるルーシッドは23日、特別買収目的会社(SPAC)との合併を完了して上場する予定だ。サウジ政府系ファンドのパブリック・インベストメント・ファンド(PIF)が同社の60%以上を保有することになる。SPACの現在の株価に基づけば、同社の時価総額は約360億ドルになるとみられる。今回の上場は、ルーシッドが生き残りに苦戦していた2018年に、タイミングよく投資を行った成果といえる。ルーシッドにサウジから生命線をもたらしたのはムハンマド・ビン・サルマン皇太子だ。ムハンマド氏は石油依存を脱却し、国の富を多様化する一環として、未曽有の金額を新興企業に投じるようPIFに迫っていた。