銅価格下落のきっかけは
テーパリング実施の可能性が高まったから
それでは、本題に戻ろう。今回の銅価格が下落した背景は、その他の金融商品と同様、米国の雇用関連統計が改善し、テーパリング実施の可能性が高まったことがきっかけである。
テーパリングの進捗(しんちょく)は、米国が金融緩和のアクセルを緩めることを意味する。通常であれば市場へのドル供給の減少、長期金利の上昇を通じてドル高が進行し、ドル建て資産価格の下押し要因となる。
なぜドル高が進行すると、ドル建ての商品価格が下落するのか。商品がそもそも持っている価値は、ドル指数の動向によって変動しないからだ。
銅は加工して電線や銅箔などに用いられるが、別にドル高になっても、ドル安になってもその物理的な性質や価値は変わらない。ドル高になったからといって銅の通電性が下がり、銅線としての価値が下がるわけではない。
つまり、物質として有している「本源的価値」は、為替の動向によって変化しない。ドルが減価した場合には、同じ価値のものを購入しようとした場合、より多くのドルが必要になるということである。
その結果、ドル高につながるイベントの時にはこうした金融的な要因によって、価格が変動することになる。
ドル高進行は実需・投機両方の売り材料となる。仮にドル高が進行したとしても、現物の需給バランスがタイトであれば、そこまで大きな下落にはならない。
実際のところ、銅の需給バランスは緩和していて、価格を押し下げる方向に働くはずだった。しかし、これまで世界的な金融緩和の継続やコロナワクチン接種が進捗していることなどに対する「期待」が、価格を押し上げてきた可能性が高い。
実際の銅の需給バランスを把握することは、極めて重要ではある。ただし、ICSG(International Copper Study Group:国際銅研究会)や金融機関などの調査機関が発表している需給バランスは、集計結果を基にするため数カ月遅れの実績であり、予測値についてもいろいろな思惑を内包した数字なので、足元の需給動向を考える上で参考にしにくい難しさがある。
そうした難しさもあり、市場参加者は銅の期間構造、すなわち銅の直近限月価格(最も早く納会を迎える先物・先渡しの価格)と2カ月、3カ月などの先物・先渡し価格の「差」に着目している。
通常、先物や先渡し取引の場合、倉庫の保管料や金利が上乗せされるため、直近限月の価格よりも3カ月先渡し価格の方が高くなる。これに対し、直近限月価格の方が3カ月先渡し価格よりも高ければ、「今すぐに銅が欲しい人>3カ月後に銅が欲しい人」であることを意味する。
こうした価格の期間構造、つまり直近限月の取引価格が先物・先渡しの取引価格より高い状態を「バックワーデーション」、直近限月の取引価格が先物・先渡しの取引価格より安い状態を「コンタンゴ」と呼ぶ。



