ビル群Photo:PIXTA

JポップならぬJ哲学
輸入と土着の超克

 日本のポピュラーソングを指して「Jポップ」と呼ぶ。では、「J哲学」という呼称をご存じだろうか。この言葉を聞いたことがある読者は少数だろう。

 J哲学とは、ウィトゲンシュタイン研究で有名な哲学者・鬼界彰夫氏が使い始めた言葉らしい。同じく哲学者である山口尚氏が、近著『日本哲学の最前線(講談社現代新書)』でJ哲学を掘り下げて紹介している。

 山口氏によれば、J哲学とは、哲学におけるJポップの類似物である。Jポップが本格的に登場する前の音楽シーンは、輸入音楽のカバー曲と、演歌・民謡など土着音楽が強い影響力を持っていた。Jポップとは、これら輸入音楽と土着音楽の超克として発展した。

 1970年代、西城秀樹さんが『Y.M.C.A』のカバー曲『YOUNG MAN』をヒットさせた。80年代の田原俊彦さんのデビュー曲も、『New York City Nights』をカバーした『哀愁でいと』だ。同時期に、『思いで酒』や『みちのく一人旅』など演歌のヒット曲も数多く生まれた。輸入と土着の時代だった。