タリバンとイスラム教に対して日本人が誤解しやすい3つの点写真はイメージです Photo:PIXTA

タリバンによるカブール制圧とその後の混乱が世界を震撼させている。イスラム過激派によるテロの温床になる危険性に加え、女子教育の否定など女性の人権を蹂躙(じゅうりん)する懸念などが背景にあることは間違いない。しかし一方で、「イスラム教=男女差別的」と決めつけることも一面的である。タリバンの主張とイスラム教の教えは必ずしも合致しない。本稿では、タリバンの主張を出発点に、イスラム教とジェンダー平等について改めて考え、イスラム教を理解する一助にしたい。(芸術文化観光専門職大学教授 山中俊之)

タリバンの主張とイスラム教の教えは
必ずしも合致しない

「家から出ることができない」

 武装勢力タリバンがアフガニスタンの首都カブールを制圧後すぐに、カブール在住のアフガニスタン人女性から、筆者にメッセージが届いた。

 タリバンのアフガニスタン制圧と米軍の撤退は、キャリアアップを目指して仕事に励んでいた彼女の人生を大きく狂わせてしまいそうだ。

 タリバンによるカブール制圧とその後の混乱が世界を震撼(しんかん)させている。

 イスラム過激派によるテロの温床になる危険性に加え、女子教育の否定など女性の人権を蹂躙(じゅうりん)する懸念などが背景にあることは間違いない。

 確かにタリバンは、女子教育に否定的だ。

 しかし一方で、「イスラム教=男女差別的」と決めつけることも一面的である。タリバンの主張とイスラム教の教えは必ずしも合致しない。

 本稿では、タリバンの主張を出発点に、イスラム教とジェンダー平等について改めて考え、イスラム教を理解する一助にしたい。さらに、日本におけるジェンダー平等について別視点で考える契機にもしたい。

 そもそもイスラム教は、ジェンダー平等についていかなる考えを持っているのであろうか。

 私は三つの点が重要であると思う。いずれも日本人が誤解しやすい点だ。