中国有数の港で感染者が出て、世界の海運が混乱

 問題の一つは、港湾の作業員に感染者が出て、港湾全体の作業が止まってしまうケースが頻繁に発生していることだ。

 例えば、今年5月に、感染対策がうまくいっていた深センの塩田港に新たな新型コロナ感染者が発生した。そのため、同港の作業スピードが1カ月ほど大幅ダウンした。深セン港は塩田港含めて10港から成るが、米国8路線、欧州2路線など国際路線13本を有し、世界の港湾別コンテナ取扱個数ランキング4位を誇る港で、中国華南地区最大のコンテナ貨物船の利用港としても知られ、中国の対米貿易量の25%以上を担っている(参照)。

 だが、塩田港の作業のスピードダウンにより、入港待ちの貨物船が長蛇の列となった。その光景を見て入港の見込みがつかめないと判断し、転港を余儀なくされた貨物船だけでも132隻もあった。

 3月23日に、正栄汽船(本社:愛媛県今治市)が所有していた、台湾船社エバーグリーンが運航する「Ever Given」がスエズ運河で座礁事故を起こし、世界の海運業に非常に大きな影響を与えた。しかし、塩田港の入港渋滞は、スエズ運河座礁事故の影響よりも深刻だとの見解を示す海運大手の関係者もいる。