研究者や企業は、ユーザーが用を足すだけで、胃腸の病気の兆候を探したり、血圧を観察したり、もっと魚を食べるように指導したりするスマートトイレの開発を進めている。ウィスコンシン大学マディソン校とモーグリッジ研究所に所属する生体分析化学者のジョシュア・クーン氏は「スマートウォッチやスマートフォンでできるようになったあらゆることが異なる規模で可能になると思えばいい」と話す。クーン氏は2019年、尿サンプル内の分子を調査することで継続的な健康観察の可能性を探る研究を発表した。スマートトイレによって「病気のリスクが把握できるようになるかもしれない」とクーン氏は指摘した。尿や便のサンプルはこれまでも医師が患者の健康状態を知るための手掛かりとして利用してきたが、消化管内の微生物が健康に影響する仕組みが解明され始めたことで近年、改めて注目されている。新型コロナウイルスの世界的大流行が始まると、多くのコミュニティーが下水を監視し、保健当局は各都市・地域で流行の初期の兆候に目を光らせ、感染の広がりを追跡することができた。