社会的な「成功レール」の崩壊、どんどん不確実になる未来、SNSにあふれる他人の「キラキラ」…。そんな中で、自分の「やりたいこと」がわからず戸惑う人が、世代を問わず増えています。本連載は、『「やりたいこと」はなくてもいい。』(ダイヤモンド社刊)の著者・しずかみちこさんが、やりたいことを無理に探さなくても、日々が充実し、迷いがなくなり、自分らしい「道」が自然に見えてくる方法を紹介します。
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「積上型」で世界一に上り詰めた選手とは?
私の著書『「やりたいこと」はなくてもいい。』(ダイヤモンド社刊)では、「やりたいこと」があったほうがいい人(逆算型)と、「やりたいこと」をあえて作らないほうがいい人(積上型)の2タイプの人がいることをお伝えしています。
実は私は、一番の趣味が野球観戦(オリックスファン)なのですが、「この人は絶対に積上型に違いない!」と思っている選手がいます。
オリックスから生まれた大エース、ドジャースの山本由伸です。世界最強の投手といっても過言ではないと、勝手ながら思っています。
ルーキー時代からずっと山本由伸を見てきて、彼は「積上型」で世界一に上り詰めた選手だと思っています。
「気がついたらここまで来ていた」
1月24日に原宿のNIKEで行われたトークショーの中で、山本由伸はこう語っていました。
「一個ずつ目標をクリアしていったらまた次が見えて、もっとこうなりたいと強く思う。その連続で、気がついたらここまで来られました」
「18歳の自分が想像したら今のこの姿が見えなかっただろうけど、なりたい目標が何個もあって、それを一個ずつクリアしていったら、気づいたらここまで来ていたという感じでした」
幼い頃からプロ野球選手を目指していた大谷翔平とは違い、山本由伸がプロ入りを考え始めたのは高校に入ってからだそうです。
プロ入団当時も、最初から「メジャーリーグでワールドシリーズMVPを取る」という大きな目標を立てたわけではありません。
幸か不幸か…一般的には不幸なんでしょうけど、山本由伸が入団したときのオリックスは弱いチームでした。どんなにいいピッチングをしても、野手が打ってくれず、点が入らない。エラーをして点を取られる。
ひどいチームでした。
そんな中、山本由伸は勝敗にはこだわらず、自分の理想の身体の動きをマスターして、自分の理想の投球をすることに集中していました。あの独特のやり投げなどを含む練習法が、その理想の身体の動きを作っています。
こういう風に身体を動かしたいという理想をイメージし、一歩ずつ、その理想に近づいていく。
そうしたら、次の理想が見えてくる。
それを目指してまた進む。
山本由伸はこの繰り返しを続けてきました。
その結果、「18歳の自分には、今の姿が見えなかった。
でも、一つずつ積み重ねていったら、気づいたらここまで来ていた。」という場所に到達したのです。
「積上型」だからこそ、到達できる高み
時々、こんなことを言う人がいます。
「積上型では、大きな成果は出せない」
「大きな成果を出すには、最初から大きな目標を立てて、そこから逆算しないといけない」
本当にそうでしょうか。
山本由伸は、2025年にワールドシリーズMVPを受賞しました。MLBで最も名誉ある賞の一つです。
これは、十分に「大きな成果」ではないでしょうか。
逆算型の人は、最初に大きな目標を立てます。
「10年後にはこうなっていたい」と決めて、そこから逆算して今やるべきことを決めます。
これは素晴らしい方法ですが、一つ問題があります。
最初に立てた目標が、自分の限界を決めてしまうことがあるのです。
18歳の山本投手が「ワールドシリーズMVPを取る」という目標を立てられたでしょうか。
おそらく、立てられなかったでしょう。18歳の時点では、その可能性を想像できなかったのですから。
でも、積上型は違います。
目の前のことに真剣に取り組んだら、次の行き先が見えてくる。それをクリアしたら、また次が見えてくる。
この繰り返しで、過去の自分には想像もできなかった高みに到達できるのです。
「積上型」の人の真の強みとは?
積上型の人は、自分の限界を自分で決めません。
今できることをやる。
それができたら、次に見えたことをやる。
その繰り返し。気づいたら、想像もしていなかった場所にいる。
これが、積上型の強みです。積上型の人が到達する場所は、想像の範囲外にあることがあります。
山本由伸が、まさにそれを証明しています。
もしあなたが積上型で、「大きな成果を出せないんじゃないか」と不安に思っているなら、山本由伸のことを思い出してください。
「気づいたらここまで来ていた」という、この言葉を呼び起こしてください。
一つずつ積み重ねていけば、想像もしていなかった場所にたどり着けます。
大事なのは、今、目の前にあることに真剣に取り組むこと。それをクリアしたら、次に見えたことに取り組むこと。
その繰り返しです。
最初から大きな目標を立てる必要はありません。
自分の限界を自分で決める必要もありません。
ただ、一つずつ積み重ねていけばいいのです。
気づいたら、あなたも想像もしていなかった高みにいるかもしれません。
*本記事は、『「やりたいこと」はなくてもいい。 目標がなくても人生に迷わなくなる4つのステップ』(ダイヤモンド社刊)の著者しずかみちこさんのメルマガから抜粋・編集したものです。




