今後20年間で452万人の
女性たちが定年に直面する
働き方改革が叫ばれる今でも仕事と子育ての両立は厳しいが、かつての状況は今とは比較にならない。子どものいる人は、子どもが幼少期には保育園に預け、毎日が綱渡りの日々だったであろう。先進的な大手企業は育児休暇を導入し始めた頃だったかもしれないが、運用面では画一的で、多くの女性たちが自力でなんとか乗り越えてきた。実家の両親に頼れない人は、お金を使ってなんとか切り抜けた。筆者自身も、ベビーシッターや保育園に毎月給料の大半を費やしてきた時期もあった。
そんなふうにして働き続け、ふと気づけば「定年」の文字が視野に入ってくる。
総務省統計局の「労働力調査」(2021年7月)によると、45歳から54歳の女性の正規職員・従業員数は307万人、55歳から64歳は145万人で、仮に65歳を定年とすると今後20年間で合計452万人の女性たちが定年に直面する。
これまで、定年といえば男性のものだったが、これからは女性たちも定年という節目を迎える時代。その大半が、名もなき普通の女性たちだ。
女性の多い職種を除き、第一世代のほとんどが男社会の中、紅一点で頑張ってきた女性たち。南場智子(ディー・エヌ・エー創業者、代表取締役会長。横浜DeNAベイスターズオーナー、女性初の日本プロ野球オーナー会議議長。女性初の日本経済団体連合会副会長)やキャシー松井(ゴールドマン・サックス証券元副会長)のようにはなれなかったけれど、長年頑張ってきた自負がある。
一方で、紅一点で頑張ってきたからこその自負が、「自分だけはなんとかなる」という正常性バイアスを生んでいる面もあるのではないだろうか。そして、その無意識の根拠なき自信が、セカンドキャリアに進むときに、あっけなく砕かれる現実がある。