昨年、中国の不動産開発大手、中国恒大集団(チャイナ・エバーグランデ・グループ)の株式や債券価格が乱高下し、同社は新型コロナウイルス流行下でも売り上げを伸ばすために物件の大幅な値引き販売に踏み出していた。一方、政府は同社の過剰な借り入れに懸念を示していた。それでも、監査法人は恒大が今年の春に公表した2020年の決算報告書にお墨付きを与えていた。恒大は現在、総額3000億ドル(約33兆円)を超える債務を抱え、経営破綻の危機に直面している。中国政府は地元当局に対し、恒大が破綻した場合に備えるよう指示している。監査を担当した大手会計事務所のプライスウォーターハウスクーパース(PwC)の香港事務所は恒大の昨年の財務諸表を承認した際、いわゆるゴーイングコンサーン(継続企業)注記を記載しなかった。それが記載されれば、当該企業が少なくとも12カ月間存続できる能力について、監査法人が疑問視していることを示す警告となる。