新事業成功には時間がかかる
ビジネス機会の特定(OR)が鍵

 いくら頭のいい優秀な人でも次々に失敗するのが新事業の現実であり、これは大企業でも然り。

 では、より的確なテーマ設定のためには、どうすればいいのか。本連載第5回でも簡単に言及したが、それがOpportunity Recognition(以降ORと記す)=ビジネス機会の特定、つまり事業のチャンスをとらえることだ。

「よいアイデアは、実現性のあるビジネス機会へと形成されなければならない」

 こう指摘するのは米国の新事業研究者だ。つまり、当初の着想のまま事業化してもほとんどダメで、しっかり練り直さねばならないのだ。ピボット(Pivot=方向転換)もその1つだ。

 筆者は、大企業でのビジネス機会の特定のフレームワークを、下記の図のように示した(「エコシステム・マーケティング」ファーストプレス刊)。アップルやシスコシステムズなどのイノベーションへの取り組みはこれによく符合する。 

 広く分かりやすく説明するため、ここではP&Gの新製品開発を例にとってみたい。

「創造」はP&Gではディスカバリーと呼ばれるニーズやアイデアの特定だ。そして社内外から技術を「獲得」し、P&Gが持つものと統合したプロジェクトを「形成」して、テストなどを経てローンチ(発売)へと「決定」していく。

 まだ十分に満たされないニーズはさらに追及し、既存の製品も革新を図るなど、繰り返しトライする。また、個人やチームがバラバラに活動するのでなく、フォーカスを定めポートフォリオ管理により組織としてマネジメントしていく。つまり戦略的に組織として取り組んでいる。

 歴史的に、日本企業では現場からのボトムアップのイノベーションに期待する傾向が強かった。しかしP&Gでは、トップ・マネジメントと現場の両方の取り組みにより“ニュー・グロース・ファクトリー”を形づくっている点が特筆される。これが実現できているから、社内と社外のエコシステム(生態系)を活かしたイノベーション創造が力強く推進されるのだ。