企業経営を取り巻く環境は、これまでには考えられなかったほど急激に変化し、変化をもたらす要因は多様化している。しかし、変化のトレンドを捉えるヒントは、ネットワーク上に存在しているのだ。なぜその商品を買ったのか、感想はどうか。ソーシャルメディアでは生の声が飛び交い、さらにGPS、センサー、カメラなどが、多種多様な情報をキャッチしている。これらの膨大なデータを分析すれば、企業活動を有利な方向へと舵取りすることが可能な状況になっている。
ところが、こうした「ビッグデータ」は、従来の企業ITの環境では手に負えないものだ。「ビッグデータを経営に活用するには、企業システムの基盤、すなわちプラットフォームの構築が急務」と訴えるインターシステムズジャパン・代表取締役社長の植松裕史氏に、現在の企業ITの課題と同社のソリューションについて聞いた。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン IT&ビジネス)

企業システム基盤を刷新して
経営のスピード感をつかみ取れ

――21世紀に成長しようという企業は、ビッグデータの活用が不可欠と言われています。一方で、現状の社内データの蓄積でさえ、経営のために活用できていない企業はたくさん存在します。いままさに進行中のビッグデータ活用経営の可能性と直面する課題について、どのようなポイントに注目していますか。

うえまつ・ひろし
インターシステムズジャパン株式会社
代表取締役社長/日本統括責任者
日本NCR、国内大手システムインテグレータ米国法人代表、日本テキサス・インスツルメンツを経て、1996年、HNCソフトウェア日本法人を設立、代表に就任。人工知能技術によるリスクマネジメントシステムの国内の導入に従事し、同社アジア・太平洋統括代表就任。オーストラリア、シンガポール、台湾、韓国など、各国でビジネスを立ち上げる。2002年フェア・アイザック社アジア・太平洋統括代表就任。その後外資系ソフトウェア企業日本法人代表を歴任。08年10月より現職。(社)地域医療情報研究開発機構理事。
Photo by Shun Ohtsuka

 「ビッグデータ」は、今日のIT環境を考えるうえできわめて重要な概念です。その特性は、Volume(大容量)、Variety(多様性)、Velocity(速度)の「3つのV」で語られます。つまり、ビッグデータを活用した経営を進めていくには、従来のIT環境では取り扱いが困難なほど「大量」で、しかも、動画、Twitterでのつぶやき、センサーが拾い上げる情報などまで含めた「多様な」データを、リアルタイム性を追求しながら「高速処理」するIT環境が必要なのです。

 ただし、昨今のビッグデータ関連の話題は、MapReduceやHadoopなど、分析の技術やツールにのみ焦点があたっているように感じられます。私はむしろ、ビッグデータ時代は「スピード感」というキーワードに注目すべきだと言いたいですね。いま動いている変化をつかみ、いま意思決定して、いま行動をとることが可能になったのが、ビッグデータ時代なのです。

「ビッグデータを活用した経営」を実現するには、データ収集に始まり、データを保存・管理・分析したうえで、配信・共有したり、分析結果を見て人間が意思決定したり、意思決定に即応して行動するためにアプリケーションを作り替えるところまで含めた企業全体のIT環境を整備しなければなりません。分析だけで終わるものではないのです。しかもビッグデータは、データの形態や種類がどんどん多様化し、活用方法も今までにないものがどんどん生まれてきます。

「経営のスピード感」をつかみ取るために重要なのは、変化・変貌があたりまえのビッグデータというものを管理して、次の行動にまで活かせる「企業システム基盤」を作ることだといえるでしょう。