ソーシャルメディアの急成長により、インターネットには膨大なデータが溢れ、大量のデータがリアルタイムに生成されている。これによって、ユーザー個人にあったサービスが提供されることになれば、利点も大きい。しかし、データが縦横無尽に探索されると心配なのがやはりプライバシー問題だ。現在、そうしたビッグデータ時代に蔓延しつつあるデータの「ブラックマーケット」の危険性を指摘するのが、現在、アメリカでビッグデータ関連の代表的なスピーカーであるジャッド・ヴァレスキー氏だ。
これまでIBM、ネットスケープ、AOL等でエンジニアリング、製品開発、M&Aを行ってきたテクノロジー業界のベテランであるヴァレスキー氏は、2008年に自らビッグデータ関連企業、グニップ(Gnip)社を共同創設している。そんな彼だからこそ語れるビッグデータ時代にはびこる「ブラックマーケット」の真の姿とその効果的な対策とは何か聞いた。(聞き手/ジャーナリスト 瀧口範子)
サイト「利用規約」が破られ、
データが採取、売買されている
――「ビッグデータ」が注目されるようになったが、あなたはデータの専門家として、データの「ブラックマーケット」の危険性についてたびたび論じてきた。どんなことが起こっているのか。
IBM、ネットスケープ、AOL、ワンボックス・ドットコム、ミー・ディウムなどでエンジニアリング、製品開発、M&A(企業買収)チームに属してきたテクノロジー業界のベテラン。2008年に、ソーシャルメディアのAPIアグリゲーション/サービス開発会社、グニップ(Gnip)社を共同創設した。ビッグデータ関連では、頻繁にスピーカーとして登場する。
現在は、ソーシャルメディアのサイトでユーザーが生み出すリアルタイムのデータが、各サイトによってある程度オープンにされ、それがデータ・プロバイダー企業によって集められている。データを観察することをなりわいにするモニター企業もあるが、さらに金融、メーカー、小売業などさまざまなデータ・ユーザー企業がそれを再利用している。新製品の反応を把握したり、ブランドに対する消費者の認知度を測ったりすることに使われているのだ。
モニターしていれば、何か問題があった時に、それをキャッチしてすぐに対応することもできる。もちろん、災害救援を行う組織も、こうしたソーシャル・データ利用に注目している一分野だ。だが、その中で、サイト(パブリッシャー)側が定めた「利用規約」を超えてデータを採取し、それを別の企業に売るといった行為が行われているのだ。