日本における街づくりの
特徴と今後の課題
古川 : 大規模な街づくりは、長期的な視点で取り組まなければなりませんし、プロジェクトが大きくなります。一民間企業でできる範囲は限定的です。一方で、海外に目を向けると、たとえば、イタリアのミラノでは、既存の道路をつくり直し、自転車とマイクロモビリティ専用道路を、かなり長い距離にわたって設置した例があります。そして並行して走る車の速度は、時速30kmくらいに制限しています。都市を再構築して、自動車中心から人中心の街にする交通政策といえます。
日本ですと、行政がなかなか踏み込めない現状があります。日本の道路は自動車が主役で、生活の質を上げようとすれば、かなり根底からインフラを変えていかなければいけないと思うのですが、こうした点はどのようにお考えですか。
須永 : たしかに、道路、駐車場など、自動車のために使用している面積だけを取っても街が自動車中心に構成されているのを感じますね。今後、自動運転になったり、電気自動車が増えていったりと、モビリティの未来像であるCASEが実現していくと思いますが、これに街づくりがシンクロしていくことが重要だと思います。
たとえば、大きな駅のターミナルだけでなく、小規模な乗り継ぎスポットがそこかしこにあるようになれば、生活者の利便性は格段に上がると思います。オフィスビルやマンションに、従来のタクシー乗り場だけでなく、電動のシェアモビリティ(自動車、スクーター、自転車など)のポートがあり、自在にモビリティを乗り換えて効率よく移動できるハブがたくさんできれば暮らしやすいのではないかと考えます。今後を見据えて生活とモビリティがもっとうまくリンクする提案ができればと思っています。
いきなり大規模なプロジェクトに挑むのは難しくても、まずは小さなプロトタイプとなるサービスがさまざまな街で試され、私たちの生活の質が向上する景色が可視化されるのが先決だと思います。いずれにしても、メーカーやディベロッパーがビジネス目線で主導するのではなく、生活者の「こんなふうになったらいいね」というアイデアが実行レベルに上がる仕組みが確立されないと、マーケットとして成立しにくいと感じます。