サステナビリティ戦略の実行は本業そのもの 脱炭素社会に向けたイノベーションを進める

サステナビリティ×イノベーション

ウィン・ウィンの関係を保ち
CO2削減に協力して取り組む

山本 : CO2削減対策は、省エネ、創エネ、再エネ調達の3本柱で進める必要があります。それぞれ、どのような取り組みを進めておられるのでしょうか。

釣流 : まずは省エネですが、セブン−イレブンやイトーヨーカドーは食品を扱っているので、照明よりも冷凍・冷蔵ケースや空調で多くの電力を消費しています。安全・安心な食品を提供することは当社グループの大切な使命なので、それと省エネをうまく両立させなければなりません。非常に困難な取り組みですが、CO2排出量削減対策チームが中心となって、さまざまなソリューションを用いた実証実験を行っています。

 2020年11月には、最新の設備・技術を利用した省エネの実証店舗として、「セブン−イレブン青梅新町店」(東京都青梅市)をオープンしました。LED配灯の見直し、チルドケースエアカーテンの性能向上、店内正圧化などの工夫により、50%以上(2013年度比)のCO2削減を実現しています。

 この青梅新町店をプロトタイプとして、今後開設する新店舗を中心に次世代型の省エネ店舗を増やしていく予定です。

 創エネについては、2021年3月にNTTグループと国内初のオフサイト型コーポレートPPA(電力購入契約)を締結しました。NTTが遠隔地(オフサイト)に設けた2つの太陽光発電所から、送配電網を経由してセブン−イレブン40店舗および、「アリオ亀有」(東京都葛飾区)に電力を供給する契約です。

 オフサイトPPAで不足する部分に関しては、NTTグループが所有するグリーン電力発電所を活用することで、店舗運営に使用する電力の100%再エネ化(RE100)が実現できます。

 また調達では、太陽光発電に限らず、風力、水力発電を含むさまざまなソリューションの導入を検討しています。

山本 : ヨーロッパでは、再エネ電源を共同保有し、地域内で自家消費するエネルギーコミュニティモデルの構築が普及し始めており、弊社では日本市場での構築の可能性について検討を行っております。たとえば、御社と地域の自治体や企業が共同で再エネ電源を保有し、御社の商業施設や店舗だけでなく地域の他の需要家にも供給することで、地域全体で再エネ利用率を上げていくといった取り組みも、将来的には考えられるのではないでしょうか。

釣流 : 実際に自治体で検討されているというお話を伺うことがあります。社会課題の解決に向けて検討すべきテーマだと考えています。

山本 : スコープ3に関しては、どのような取り組みを行っておられますか。

釣流 : お取引先様とはウィン・ウィンの関係を保ちながら、CO2排出量削減目標の達成に向けて一緒に取り組んでいきたいと考えています。

 たとえば、お取引先様の食品工場に、当社グループで太陽光発電を設置するといったPPAモデルのようなケースも考えられます。当社グループが採用している省エネや創エネの技術を提供することも検討しています。これらによってサプライチェーン全体を網羅する排出量抑制のための仕組みが構築されるだけでなく、「一緒に取り組んでいこう」という意識がお取引先様との間で醸成されることを期待しています。

山本 : サステナビリティ対策は、ともすると“守り”の取り組みと考えられがちですが、新たな事業機会を獲得する“攻め”の視点を持たなくては、環境・社会と企業価値の持続的成長を両立させることはできません。

 サステナビリティ経営による機会獲得という点については、どうお考えですか。

釣流 : 小売業という立場から言うと、最も大きいのは将来のお客様のニーズに応えるためにサステナビリティは欠かせないということですね。

 2020年度から本格実施された新学習指導要領には「持続可能な社会の創り手の育成」という目標が明記されており、これから社会に出る子どもたちはSDGsへの取り組みが当たり前だと考えるようになります。そうした次世代の声についてアンテナを高くしてキャッチしながら、フロントランナーとしての責務を果たし続けたいと思っています。

山本 : ややテクニカルな話になりますが、デマンドコントロールによって送配電網の系統混雑回避に貢献することで、送配電事業者から金銭的なインセンティブを得るというスキームもあり、ヨーロッパでは実際に活用されています。

 日本でも2023年4月以降は託送料金制度の変更により同様のスキームが導入可能となる見込みで、たとえば、御社が地域内のグループ数百店舗の電力需要を調整することで、送配電事業者からインセンティブを獲得できる可能性も出てきます。

 グリーントランスフォーメーションに向けた新たなテクノロジーやスキームはどんどん進化していますので、サステナビリティ経営を実行していくうえでは、そうしたイネーブラー(目的の達成を可能にするもの)の活用戦略も常にアップデートしていく必要があると思います。

釣流 : おっしゃる通り、非常に変化の速い世界なので、日々情報を取りながら、努力していく所存です。

山本 : 本日はありがとうございました。

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