私はスティーブの死についてほとんど考えたことがない。残酷で、胸が張り裂けそうな10年前のあの日の記憶はまばらで、時系列も定かでない。車を運転して彼の自宅に行ったことも思い出せない。かすんだ10月の空や、きつすぎた靴のことは確かにおぼえている。ティム(・クック最高経営責任者)と二人で長いこと庭に座っていたことを後から思い出した。追悼文を書いてからは、私たちの友情や冒険、あるいはコラボレーションについて公に語ることはしてこなかった。数ある特集記事や追悼記事、いつのまにか語り継がれている奇想天外な誤った記述は一度も読まなかった。だが、スティーブのことを思わない日はない。ローレンと私は仲がいい。30年近く、家族ぐるみで親しくしている。共に死を耐え忍び、誕生を祝ってきた。私たちはいつも話をする。スティーブについて話すことが多いが、彼と一緒にした私の仕事について話すことはまれだ。ほとんどの場合は将来について、または彼女が率いる慈善団体エマーソン・コレクティブで行っている他に類のない刺激的な仕事について話している。
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