「日本語ができない」という意識をもつ
――母語であるがゆえに、「国語力」「日本語力」についてはあまり意識することがない人が多そうですが、ネルノダイスキさんはいかがですか?
ネルノダイスキ:「情報を整理して、順序立てて伝達する」のがとても苦手だな、といつも感じています。
――イラストレーター、漫画家さんというと「言葉より絵で勝負」という感じがするのですが、日本語を使う大切さについて意識するのは、仕事のどんな場面ですか?
ネルノダイスキ:絵で勝負ということももちろんあると思いますが、一人で黙々とやるというより、人とかかわるのが多い仕事なんですよね。例えば編集者さん、アートディレクターさん、プロデューサーさんたちと目指す完成形を共有するときには言葉でお互いに共有していく作業は欠かせません。
必ずしも関わる人たちが絵の専門家とは限らないので、伝え方には気を付けています。
――なるほど、伝えるときはどんなことに気を付けていますか?
ネルノダイスキ:完成形のイメージの共有をするときにはさまざまな伝わりやすいたとえ話や比喩、他のイメージの引用(映画の○○のあの場面、とか)を駆使しています。
いくらいい絵を描いても、それを言葉で説明できないと相手を「納得」させられません。相手が「納得」して初めてOKが出るので、その点は特に注意しています。
――『独学大全』を読む前と読んだ後で、伝え方はどう変わりましたか?
ネルノダイスキ:第2部技法16の「カルテ・クセジュ」が役立っています。自分が仕事の調べ物などをしていて情報にまみれたときに使います。そうすると自分の頭も整理され、相手に伝えるときもシンプルに言語化できます。この項目に掲載されていた川喜田二郎や梅棹忠夫の本などにも手を広げて読んだりして、それも役に立ちました。
――マンガに「クソリプに菩薩の心で対応」というコマがありました(笑)。SNSで言葉を使ったり、読んだりするとき、どんなことに気をつけていますか?
ネルノダイスキ:書くときは、卑屈になりすぎず傲慢になりすぎず、というフラットな意識で書くようにはしています。一方で読むときは、書き込みだけで書いた人の人格を判断しないようにしています。書き込みはその人の一側面に過ぎないので。
いずれにしろ、『独学大全』にも書いてあったように「自分は日本語を読めていない、書けていない」という自分の日本語能力の不足を常に意識するようにしていますね。「自分はできる」と傲慢になると、痛い目をみる気がしています。
過去のマンガはこちら↓
第1回 仕事が詰まっているのになぜかゲームをしてしまう…全てのフリーランスが読むべき1冊
第2回 仕事の時間を恐ろしいほど奪う「なんとなくツイッター」をやめるための決定打
第3回 仕事ができない人は「ググる技術」が圧倒的に足りていない
第4回 本を片っ端から読んでいるのに「賢くなれない人」の残念な習慣