20万部のベストセラー『独学大全──絶対に「学ぶこと」をあきらめたくない人のための55の技法』発売から一周年。今回、唯一の公式サブテキスト『【電子書籍限定】『独学大全』公式副読本』が発売されました。この一年間に集まった様々な独学の悩みを解決するとともに、『独学大全』を英語、国語、数学、経済学、歴史……など、それぞれの学問分野の学びにどう生かすかについて、徹底的に解説しています。
この連載では、著者の読書猿さんが「勉強が続かない」「やる気が出ない」「目標の立て方がわからない」「受験に受かりたい」「英語を学び直したい」……などなど、「具体的な悩み」に回答。今日から役立ち、一生使える方法を紹介していきます。
※質問は、著者の「マシュマロ」宛てにいただいたものを元に、加筆・修正しています。読書猿さんのマシュマロはこちら

「本を読んでも何も思い付かない」悩みへの超納得の解答Photo: Adobe Stock

[質問]
 レポートのテーマの決め方を教えてください。

 私は現在大学一年生で、ヘッセの『デミアン』のレポートを取り組んでいます。このレポートは課題が設定されておらず、自分でテーマを決めなければいけません。デミアン自体はとても面白く読めたのですが、テーマを決めようとすると途端に何もアイデアが浮かんでこなくなります。そこで文学作品のレポートのテーマ決めについて、何か知見をお持ちでしたらぜひお教えいただきたいと思い、マシュマロを投げさせてもらいました

 お忙しいかと思いますが、お力添えいただければ幸いです。

テーマを決める方法論を教えます

[読書猿の回答]
 問題は、テーマが浮かばない(から決められない)ことではなく、文学作品のレポートとは何か? 何をどう書くべきで、そのためにはどんな読み方をすればよいのか? をご存じでないことだと思います。

 何度か紹介した本ですが、ディキンソン『文学の学び方―付/論文・レポートの書き方』に必要なことは大方書いてあります。書きなれた人でもない限り、テーマは自然に浮かぶものではありません。多くの場合、人為的に(無理矢理に)生じさせるものです。

(1)《印》を残しながら読む
 そのためにはまず読むところから工夫が必要です。簡単に言うと、付箋や下線引きのような《印》を残しながら読むことです。どこに印を残すか? 重要だと思ったところ、気になったところ、疑問が生じたところなど、心動いたところ全部です。これは多いほど後で助かります。

(2)読み返す
 最後までいったら、再度《印》を残したところを読み返します。《印》を残したところをこの時点で抜書きしてもいいでしょう。

(3)グループにまとめる
 《印》を残したところを読み返しながら、関係ありそうなものをまとめ、必要なら並び替えて、いくつかのグループにまとめてみます。KJ法などの技法をつかってもいいでしょう。こうして自分が引っかかったところと何度もまみれるうちに、《印》をつけた部分をまとめるキャッチフレーズやパースペクティブなど、「つまり◯◯ってことじゃね?」というもの、2~3のテーマ候補が浮かんできます。

(4)メモにする
 2~3のテーマ候補が浮かんだら、それぞれについて、どんなことが書けそうか、思いつくままにメモを書き出します。こうすると候補からどれを選べば、一番書けそうかが分かります。こうしてテーマを決めていきます。