南部国境に押し寄せる移民希望者、新型コロナウイルスのパンデミック、インフレなどが米国の政治システムにのしかかっているが、今のところそこまで深刻に捉えられていない問題がある。エネルギー危機だ。欧州のエネルギー価格は昨年、5倍に上昇した。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領はこの状況を、同国に利益をもたらす材料として活用しようとしている。エネルギー生産が米国にとっても戦略的な強さの源泉であるにもかかわらず、気候変動対策の夢物語のために米国がその力を手放すリスクを冒していることを思い起こさせる。欧州のエネルギーシステムが域内の化石燃料の排除を目指しているため、欧大陸は、世界的な石油・天然ガス価格の急上昇による打撃を受けやすくなっている。フィナンシャル・タイムズによると、2021年には「欧州北部を吹き抜ける風の強さが15%も低下した」という。これによって、欧州の風力発電会社の生産性が低下し、天然ガスへの依存度が高まった。欧州向け天然ガスの主要な供給国はロシアだ。
【社説】エネルギー戦略を手放す米とつけ込む露
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