米国の政治で人種が語られるとき、主に対立するのは、そもそもこの国が進歩してきたのかどうかという点だ。リベラル派と保守派はかつて、黒人の社会的地位が公民権運動以降、大きく向上したという見方で一致していた。だが勢いを増す左派は、人種差別が「構造的」になり、隔離政策を進めたジム・クロウ法が、白人至上主義を装う「新ジム・クロウ法」に取って代わり、皮膚の色で差別しないとの理想はそれ自体が疑わしいという新しい物語を唱え、このコンセンサスに疑問を呈している。  このような過激な意見を裏付けるのが、黒人と白人の生活状況(犯罪や教育、財産など)の揺るがぬ格差を示す統計値だとされている。