
ダイヤモンド・ザイNISA投信グランプリ2025の「日本中小型株部門」で優秀賞を受賞した「イーストスプリング・ジャパン中小型厳選バリュー株ファンド」。2024年に続き、2年連続での受賞だ 。運用責任者のマックス・ゴドウィンさんは、日本在住経験もある日本通で、巧みな大阪弁での語り口が特徴。常にトップクラスの運用成績を誇る秘訣と、今後の日本株市場の展望について聞いた。(須賀彩子、ダイヤモンド・ザイ編集部)
「宝の山」中小型株に潜む
アナリスト未開拓の価値
――日本の数ある中小型株ファンドの中でも、2年連続でトップクラスの成績です。運用の特徴や、高いパフォーマンスの秘訣について教えてください。

Photo by Kuninobu Akutsu
ゴドウィン まず、17年以上このファンドを運用してきましたが、毎年必ず1位というわけではありません。短期的には、他のファンドに運用成績が劣る年もあります。しかし、私たちの強みは中長期的なパフォーマンスにあります。
長期運用を前提とした投資プロセスで、ファンドの評価もぜひ長期的な視点で見ていただきたいと考えています。
――中小型株に厳選して投資していますが、メリットは何でしょうか。
ゴドウィン 中小型株には、大きな成長ポテンシャルが眠っています。その最大の理由は、証券会社のアナリストによるカバーが手薄なことです。例えば、ソニーのような有名企業の動向は、世界中のアナリストが常に分析しており、情報は瞬時に世界中に行きわたります。
一方で、中小型株にはアナリストが全くカバーしていない銘柄が数多く存在します。そうした企業を取材して深く調べていくと、市場がまだ気づいていない価値を発見できるのです。日本は経済規模が大きく上場企業数は多いですが、長く経済が停滞していたため、海外に比べて割安に放置されている魅力的な企業が数多く存在します。
――中小型株というのは、どれくらいの規模になりますか。
ゴドウィン 日本の株式市場全体で、時価総額の上位3分の2を占める銘柄を大型株、残りの下位3分の1に入る銘柄を中小型株と捉えています。中小型株は2000銘柄以上あり、世間でよく知られている比較的規模の大きな企業も投資対象になります。「超大型ではない」くらいの意味合いですね。
9割は捨てる!
「極端に割安」な銘柄に絞り込む
――その中から、どのようにして銘柄を見つけていくのですか。
ゴドウィン 銘柄探しの出発点は定量的なスクリーニングで、「極端に割安」な銘柄に注目します。PER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)が相対的に低い銘柄がターゲットになります。
評価軸は2つあります。まずはその銘柄自身の過去20年間(ヒストリカル)と比較して割安か。もう1つは、市場平均と比較して割安かです。このプロセスを経ることで、日本株全体の5%程度、年間で100~200社ほどに絞り込まれます。私たちは5人の少数精鋭チームなので、すべての上場企業をカバーすることはできません。絞り込んだ銘柄を、深く掘り下げて分析することに集中します。
――最終的に投資する先はどうやって選別するのでしょうか。
ゴドウィン 目先の業績はあまり気にしません。重要なのは5年後にその会社がどうなっているかです。5年後の業績やキャッシュフローを保守的に予測し、5年後の適正株価を算出します。そして現在の株価から70~80%以上の上昇が見込める場合にのみ投資を実行します。現在の株価が安ければ安いほど、高いリターンが期待できます。
だいたい毎年5~10銘柄を新規に組み入れ、3~5年ほど保有する長期運用です。
