客の絶対数が増えないのに、
見かけの数字をあげようとする人々

 以前、ある会社のコンサルティングで、新規事業立ち上げの事業計画を書いていました。しかし、何をどう工夫しても黒字計画がつくれません。理由は、固定費や変動費などを合計した経費が大きすぎること、そして、世の中は極端に低価格化が進んでいるため、現実的な計画であればあるほど、事業が損益分岐点(これ以上の売上を超えれば利益が出るというライン)を超えないのです。

 周りの多くの事業責任者たちは「えいや!」とばかりに、昨対比150%の成長!といった計画をつくっていました。しかしプロフェッショナルとして、私はそういう机上の空論を組み立てることに納得できず、苦しんだ記憶があります。

 そして、重い経費の中でも、負担が大きかったのが広告宣伝費でした。たしかに、周りを見ても、世の中はモノで溢れています。新しい商品を開発して世に出すとき、周りの商品に埋もれないようにするためには、それなりの露出は必要になるのは理解できます。

 しかし、細かく計算していくと、事業の種類にもよりますが、たとえば年間100億円規模の売上目標のEコマース事業を立ち上げるとすると、広告費だけでなんと総額数十億もの投資が必要になることもあります。また、あるヤング向けのアパレルビジネスの担当者は、巨額な広告宣伝費を止めると顧客が離脱し、売上が一気にとまってしまうと嘆いていました。

 こうして、顧客の絶対数は増えないにもかかわらず、広告という栄養ドリンクを飲み続け、お金をかけて擬似的なフローの増加(本来の実力値でない顧客の流入)をつくり続けているのです。この結果、当然ですが、広告費が払えなくなった瞬間、そのビジネスは息の根が止まります。また、儲かっているのは広告代理店のみ、ということになってしまうのです。

 それでは、広告宣伝費を使わず(というより、効果的に使って)いかにしてビジネスをフロー型からストック型に変えていけるのでしょうか。次回は、その戦略を詳しく説明します。

(次回は11月30日更新予定です。)


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