前回から復活した『ブランドで競争する技術』の入門編の短期連載。変化の激しい日本で、ブランドを使いながら、どうお金儲けをしていくかをお話しています。今回は、広告宣伝に依存しすぎてしまう日本人の傾向について。
テレビCMは栄養ドリンクのようなもの?
さて、前回、世の中は成長期から成熟期に移り変わったのに、「売上」のつくり方を「フロー型」から「ストック型」に移行できないでいる人たちのことをお話ししました。多くの企業は、いまだにフロー型から抜けきれておらず、その兆候は、広告宣伝費のかけ方に表れることも少しだけお伝えしました。今回はこのことについて、もう少し詳しく説明していきたいと思います。
20年ほど前、「ジャパニーズ・ビジネスマ~ン」という歌声で、「24時間戦えますか?」というキャッチコピーが流行りました。某社の栄養ドリンクの宣伝です。当たり前ですが、人間は24時間も働き続けると体をこわしてしまいます。しかし、当時は経済が成長していたため、世界中から日本人は「ワーカホリック」(働き過ぎ、仕事中毒)と呼ばれていました。当時、栄養ドリンクは、「本当は(24時間働くことなど)無理なのだが、できるようにするための支援ツール」だったのです。
実は、広告宣伝費というのは、この栄養ドリンクに似ています。確かに効果的なテレビCMを数多く流せば、消費者は宣伝に影響を受け、結果的に、実際には必要のない商品を購入することもあるかもしれません。しかし、消費者にとって(本当は)必要のないものを、派手に広告を流し続けることで売り上げるのは戦略としてよいことなのでしょうか。
世にある広告宣伝の「虎の巻」のいくつかは、こうした広告宣伝の暗部に目を背け、いかにして企業が売りたい商品(消費者が欲しい商品ではない)を目立たせ、欲しがらせるか、ということを説いています。私は、昔からこうした考えに疑問を持っていました。