『鬼滅の刃』などのIP創出
株高による投資収益の確定も
ソニーがGSNを売却する理由の一つは、ソニーが重視するコンテンツIP分野へ経営資源の配分を高める狙いがあるのだろう。そのために、GSNの主要業務を、早めにプロダクト・ポートフォリオから外しておく意図が感じられる。
ソニーは『鬼滅の刃』などのコンテンツIPを生み出してファンを獲得し、ゲームなどの新しい需要の創出につなげたい。一方、GSNはカードゲームやビンゴなどのモバイルゲームを得意とする。IPランドスケープ(知財、非知財情報を分析して自社の現状と将来の展開予想を分析すること)に基づいて考えると、ソニーとGSNは目指すコンテンツを構成する要素が異なる。コンテンツIPの創出力に磨きをかけるという重要な目的に照らした場合、ソニーにとってGSNを支配下に置き続ける意義は低下しているようだ。
そのほかにも売却理由があるはずだ。その一つが、投資収益の確定だろう。2019年にソニーは約 414億円(当時の邦貨換算額)を投じてGSNの親会社であるゲーム・ショー・ネットワークを完全子会社化している。一方、今回の売却額は約1100億円だ。モバイルゲーム市場などでシェアを獲得することによってGSNの企業価値は高まった。現在、世界的に株価が高値圏で推移している状況を生かしてソニーは利得を確保し、それを成長期待の高い分野に再配分したいだろう。それも売却理由の一つといえる。
ただ、今回の売却によってソニーとGSNの関係が完全に解消されるわけではない。ソニーは売却額の半分をスコープリーの優先株として受け取る。コンテンツIP開発戦略上のシナジー効果は薄れたものの、モバイルゲーム市場でのビジネスチャンスを手に入れるためにGSNと一定の関係を維持することは重要との判断がソニーにあるとみられる。
コンテンツIP分野にフォーカスして考えると、ソニーは新しいコンテンツIP創出のために組織の集中力を高めたいだろう。そのためにGSNを売却してよりスピーディーかつ多くのコンテンツIPを生み出す体制整備を加速させようとしているのではないか。