終戦宣言は単なる政治宣言ではなく、政治的・法律的な意味合いを多く含んでいる。米国は、終戦宣言を行うのであれば、それを緻密に分析した上で進めるべきだと考えているようである。

 それでも文大統領は9月21日に国連総会の演説で朝鮮戦争の終戦宣言を提案した。その後、終戦宣言に対する国際的な支持獲得に公然と動き始めた韓国。そして、これをけん制する米国。双方の立場の違いが浮き彫りになってきた。

国連総会の演説で
再び「終戦宣言」を提案

 終戦宣言は文大統領が構想した「韓半島平和プロセス」において、非核化交渉の入り口として提示したカードである。

 文大統領は9月の国連総会の演説で北朝鮮との終戦宣言を提案したが、この提案は、文大統領が3年半にわたり推進してきたものである。2018年4月の最初の南北首脳会談では「年内の終戦宣言」を明示し、昨年の国連総会演説でも提案を行ったが、いかなる成果も得ることはできなかった。

 昨年の演説では「終戦宣言は韓半島非核化および恒久的平和を開く扉」と原則的な提案を行った。

 一方、今年の演説では「終戦宣言こそが朝鮮半島で和解と協力の新しい秩序を築く重要な出発点になるはず」「韓米朝3者または韓米中朝4者が集まって、韓半島での戦争が終了したことを共に宣言することを提案する」と述べ、「韓米朝」「韓米中朝」とその主体を明示して提案内容を具体化した。

 しかし、文大統領の構想は、米国が原則とする「先に非核化、その後に終戦宣言」と衝突するものである。加えて、2019年2月の米朝ハノイ会談以降は北朝鮮の対話基調がストップしたことから、終戦宣言構想について進展はない。

 今回の提案は、終戦宣言を交渉の窓口として提示した初期戦略を、文大統領の任期末にもう一度試みて南北首脳会談のきっかけを作ろうとするものと解釈できる。