国際社会が経済制裁を科す裏で、今も武器取引で外貨を稼ぎ続けている北朝鮮。その実態を赤裸々に撮影したドキュメンタリー映画「THE MOLE(ザ・モール)」が10月15日に公開される。「モール」とはモグラのことで、「潜入スパイ」を意味する隠語だ。自らの意思で10年もの間、北朝鮮の武器取引ネットワークに潜り込み、その実態を撮り続けてきた男、ウルリク・ラーセンさん(45)に話を聞くことができた。
* * *
映画は平凡なデンマークの料理人だったウルリクさんが北朝鮮関連団体に潜入し、平壌で朝鮮親善協会の会長のスペイン人・アレハンドロと出会うところから始まる。実は、このスペイン人、「親善団体」を隠れみのにした武器取引の仲介人なのだ。ウルリクさんは投資家「ミスター・ジェームズ」を装った役者と手を組んで、アレハンドロに巧みに接近。武器取引の話を引き出していく。アレハンドロを信用させて北朝鮮との契約を成立させた後は、武器工場を建設するためにアフリカのウガンダまで飛んで、政府要人と交渉。島ごと買収しようと計画する、という規格外のドキュメンタリーだ。
周知のとおり、北朝鮮は極端な秘密主義国家で、その実像は闇につつまれている。ましてや、武器取引の実態などは、まったくうかがい知ることはできなかった。