その結果、吉村氏の代表取締役会長再任は否決され、ヒラの取締役に降格。椋梨氏のみが代表権を持つことになった。クーデターは、わずか数分間で成功裏に幕を閉じたのだ。
その後の記者会見で、取締役監査等委員(常勤)の福田進氏は、吉村氏を代表取締役会長に再任しなかった取締役会決議について「あらかじめ準備されていたわけではない。(取締役)一人一人が高い見識の下、健全な、適切な判断をした」と説明。椋梨氏も、ダイヤモンド編集部が11月2日に行ったインタビューで「事前に準備していたものではない」と述べている。(11月8日公開予定のインタビュー記事で詳報)
つまり吉村氏の非選任は、あくまで取締役個々の判断であり、山口FGが主導したものではないというのが、彼らの主張だ。
だがダイヤモンド編集部は、それが虚偽説明である証拠を入手した。
株主総会約3週間前の6月3日、福田氏から複数の社外取締役へ発信されたメール。そこには、吉村氏を「経営トップ(代表取締役、CEO)として選定することはできない」として、代表取締役会長再任の「修正動議が必要」との文言がある。また同月16日のメールには、「吉村猛に代表権を与えず、会長は空席とする」という修正動議の具体的な中身について言及していた。
さらに6月24日の株主総会前日には、取締役会の進行シナリオも用意されていた。そこには議長役の吉村氏が議事を進行する途中、佃氏が冒頭の個別採決を「間髪入れずに提案」するタイミングまで記されている。つまり冒頭の佃氏の提案は、あらかじめ決められたせりふとして発せられたものだったのだ。
そこで浮上するのが、吉村氏を代表取締役やCEOから外す計画が事前にあったにもかかわらず、それを隠蔽して株主総会に諮ったのではないかという疑惑だ。
吉村氏は6月25日の株主総会で、99%の極めて高い賛成率で取締役に承認されている。株主の意向を無視し、取締役会が身内の論理だけでクーデターを決行したのだとすれば、それは株主への背任に他ならない。取締役の選解任は、言うまでもなく株主が持つ最重要の権利である。
極秘メールから明らかになったクーデターの狙いとは何か。ダイヤモンド・オンラインでは『極秘メール入手!山口FGが虚偽説明の疑い、株主無視で前CEO解任「クーデター」の全貌【スクープ完全版】』で、その全貌を明らかにする。