米EVリビアン出資で攻防、GMの裏かいたフォードPhoto:Anadolu Agency/gettyimages

 米電気自動車(EV)新興メーカー、リビアン・オートモーティブは、今週予定される新規株式公開(IPO)で約700億ドル(約7兆9500億円)の評価額を目指している。最大の勝者の一人はデトロイトの創業118年の老舗メーカーとなりそうだ。12%の株式を保有する米自動車大手フォード・モーターは、IPO後に70億ドルを超える利益を手にする可能性がある。

 だがこれは土壇場のどんでん返しの結果だ。2年余り前にはフォードの最大のライバル、ゼネラル・モーターズ(GM)がリビアンに大きな投資を行う手はずを整えていた。

 フォードがGMを出し抜き、自ら出資するに至った経緯は、伝統的な自動車メーカーがEV時代の主要プレーヤーへの転身を競い合う中で、いちかばちかの勝負が繰り広げられていることを物語る。この争奪戦がクライマックスを迎えたのは、プライベートジェット機内の4時間に及ぶ交渉だった。デトロイト郊外の空港に到着した際には、GM側に見つからないように慌てて車に乗り込む一幕もあった。

 1903年創業のフォードとその5年後に創業したGMは、ピックアップトラックからスポーツカーに至るまで、長年バトルを繰り広げてきた。競争を一段とあおったのはその距離の近さだ(両社の本社は約14.5キロメートルしか離れていない)。さらにEVの先駆的メーカー、テスラの躍進(自動車メーカーで時価総額は世界最大)やデトロイトの収益源となってきた産業への新たな脅威のために、両社のライバル関係は切迫感を増している。

 フォードとGMは車載バッテリー工場への投資や新たなEV事業部門の設立、デジタル技術革新に近づくためのハイテク大手や新興企業との連携を進め、両社とも野心的な目標を掲げている。GM――フォードより早期に電動シフトを打ち出し、自前の電池生産を目指すと確約した――は、昨年10月にはテスラに照準を合わせた計画を発表。EV販売で主導権を握り、テスラのセダン「モデル3」の最安タイプを下回る約3万ドルの新型電動SUV(スポーツ用多目的車)を発売すると述べた。一方、フォードは2025年にかけて300億ドルをEVに投じる計画を明らかにした。