他人と物理的・心理的な距離が広がり、「1億総孤独」といえる現代。他者に依存せず、「個」として自立するには、どうすればいいのでしょうか。寺田倉庫の経営改革などを果たし、「伝説の経営者」と呼ばれる中野善壽氏は、「孤独を生きることで、自分の感性を信じ、磨き抜くことができる」と語ります。本連載では、中野氏の著書『孤独からはじめよう』から抜粋し、「一人で生きる時代の道標」となる考え方を紹介します。

「チームのために」を強調しすぎると危険な理由Photo: Adobe Stock

「一致団結」は、本当に必要か?

若い頃から外国で働き、暮らし、長い時間を過ごした僕は感じます。
日本は「集団に自分を合わせること」が過剰に評価される国だなぁと。
「一致団結」や「一枚岩」という言葉が、日本ほどいろいろな場面で使われる国はないと思います。

昔はそれでうまくいったかもしれません。
しかし、今はどうでしょう?
世の中の、世界の状況を見渡して、果たして「一致団結」のみが本当に大事にすべきことなのかと考えたほうがいい。

同様に、よく聞かれる言葉に「For the team」や「One team」という言葉があります。
チームのために、一丸となって。
それだけで、本当に結果は出ると言えるのでしょうか。

僕は、このスローガンは強い「個」が寄り集まった自律的な集団という条件のもとで、効くのではないかと思います。
「個」がまだ育っていない状態で、このスローガンを強調してしまうと、何もしない受動的な人間がその中に紛れ込むような気がしてなりません。

どこでもむやみに「チームのために」を連呼し過ぎると、「個」で勝負して、一人の力を発揮するための修練の機会を奪ってしまうのではないかと危惧しているのです。
「個」として自分の意思を見つめるよりも先に、チームの意思(すなわち上に立つ者の指示命令)に従うことをよしとする文化を美化することに、僕は疑問があります。

少なくとも、僕は心地良いとは感じません。
そのような環境は避けようとするでしょう。