「今、何をすべきなのか」を心に問う

だから、一秒前の数字でさえ、僕は疑います。

隙なく蓄積されたデータの先に、未来予測は描けないと思っています。

やるべきことはただ一つ。

自分の感性を磨き、この目に今見渡せる風景を映し、耳を澄ましてわずかな音を聴き取り、足の裏に大地の振動を感じて、自分の心に問う。

「今、何をすべきなのか?」と。

たった一人、自分で考え、決めるのです。

2011年に寺田倉庫の“中継ぎ社長”を引き受けた時も、まったく同じような感覚で仕事をしてきました。

東京・天王洲エリアを「アートの街」としてリブランディングしようと発想したきっかけは数字ではありません。

それは、たった一人、感性を開き、今だけに集中する孤独の時間だったのです。

人間だけが持つ、普遍にして最強の力。

それは、孤独によって「個」の感性を磨き、今を起点に創造する力ではないかと、僕は思えてなりません。

(本原稿は、中野善壽著 『孤独からはじめよう』から一部抜粋・改変したものです)