他人と物理的・心理的な距離が広がり、「1億総孤独」といえる現代。他者に依存せず、「個」として自立するには、どうすればいいのでしょうか。寺田倉庫の経営改革などを果たし、NHK「SWITCHインタビュー達人達」でコシノジュンコ氏と対談、著書『ぜんぶ、すてれば』は4万部を超えるベストセラーとなった「77歳・伝説の経営者」、中野善壽氏は、「孤独を生きることで、自分の感性を信じ、磨き抜くことができる」と語ります。中野氏は孤児同然の幼少期を過ごし、孤独のなかを生きてきました。しかし、そこで自分の感性を磨き、「個」として自立していきます。そして社会に出てからは「孤独を武器」として、伊勢丹・鈴屋での新規事業展開や、台湾企業の経営者として、大胆な手腕と比類なき視座の高さをもち、数々の実績をあげてきたのです。本連載では、11月17日(水)に発売される中野氏の新刊『孤独からはじめよう』に掲載されている「他人に依存せず、自立して、素の自分をさらけ出して生きる」51の人生哲学から抜粋。「一人で生きるのが当たり前の時代」でも、肩肘を貼らず、自分に期待して、颯爽と人生を楽しむ「希望の道標(みちしるべ)」となる考え方を紹介します。
本気になるのは、1年のうち10時間だけ
ACAO SPA & RESORT代表取締役会長・CEO
東方文化支援財団代表理事
寺田倉庫前代表取締役社長兼CEO
1944年生まれ。弘前高校、千葉商科大学卒業後、伊勢丹に入社。1973年、鈴屋に転社、海外事業にも深く携わる。1991年、退社後すぐに台湾に渡る。台湾では、力覇集団百貨店部門代表、遠東集団董事長特別顧問及び亜東百貨COOを歴任。2010年、寺田倉庫に入社、2011年、代表取締役社長兼CEOとなる。2019年に東方文化支援財団を設立し、代表理事に就任。2021年8月、ホテルニューアカオ(ACAO SPA & RESORT)代表取締役会長CEOに就任。著書に『ぜんぶ、すてれば』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『孤独からはじめよう』(ダイヤモンド社)がある。
Photo by Hikita Chisato
「個」の力を生かして仕事を成すには、ここぞというときに、自分の意思を明確に示すことが大事になります。
といっても、毎日24時間、頑張る必要はありません。
絶対にこだわりたいところだけ凄みを見せて、それ以外は力を抜く。
緩急というか強弱というか、メリハリを利かせて相手に自分を見せるのがいいのではないかと思います。
僕の場合は、せいぜい10時間。
年間で10時間くらいしか、本気でギラッとした自分を出すことはない。
その時、相手の目から視線を逸らさず、譲れない一点を伝えることに集中する。
プレゼンはせいぜい30分で終わるから、30分×20回で10時間。
年に20回も本気でプレゼンすれば、大抵のことはうまく進みます。
20回のうち3回くらいは、社内のメンバーに対して使います。
本気で何かを伝える必要があるときに、僕も真剣に向き合うんです。
そこで伝えるのは言葉だけじゃない。
目の力で、声の高低で、体の動きで、全身を使って伝えます。
相当のエネルギーを使うから、頻繁にはできません。
たまにやるから、相手にも本気が伝わるのだと思います。