コロナ禍や自粛生活などの「環境の変化」により、多くの人が将来への不安を抱え、「大きなストレス」を感じている。ストレスを溜め込みすぎると、体調を崩したり、うつなどのメンタル疾患に陥ってしまう。
そんな中、このコロナ禍に22万部を突破したベストセラーストレスフリー超大全』では、著者の精神科医・樺沢紫苑氏は、ストレスフリーに生きる方法を「科学的なファクト」と「今すぐできるToDo」で紹介している。「アドバイスを聞いてラクになった!」「今すべきことがわかった!」と、YouTubeでも大反響を集める樺沢氏。そのストレスフリーの本質に迫る。

精神科医が呆れる「他人を信頼できない人の特徴」ワースト1Photo: Adobe Stock

最初の信頼はゼロで当然

 ある調査によると、「本当に信頼できる仲間がいる」と回答したのは、全体の38.7%で、残りの6割もの人が、「信頼できる仲間がいない」と答えています。職場においても、「上司が信用できない」と答える人が約6割いました。

 職場でも、プライベートでも、半分以上の人は信頼できる友人や上司を持っていないのです。

 精神科の患者さんは、「信頼できる医師が見つかりません」ということをよく言います。残念なことに、初対面で会った瞬間に信頼できると思える医師と出会うことは、ほぼ不可能でしょう。

 なぜならば、信頼とは「関係性」だからです。それまでの人生で無関係だった2人が出会ったときの関係性は「ゼロ」です。

 そこから会話をして、相手のことを知り、信頼度が少し増えます。二度、三度会って、相手のことを詳しく知ることで、信頼度はさらに増えて、それが十分に高まったときに、心から「この人は信頼できる」と思えるわけです。

 信頼関係とは、時間をかけて作り上げていくものです

 最初の信頼度は、誰でも「ゼロ」です。なので、「人を信頼できません」というあなたの実感は100%正解です。

 最初は信頼できなくてよいので、徐々に信頼関係を積み上げて、何ヶ月か後に信頼関係ができあがっていれば、それはかなり早いほうであり、ものすごく成功した人間関係と言えるでしょう。

「信頼関係のレンガ」を協力して積む

 信頼関係の構築は、互いに協力してレンガを積み上げて、レンガの家を作るようなものです。相手にばかりレンガを積ませようとしても、一向に積み上がりません。あなたが1個積むから、相手も1個積んでくれるのです

 人間関係がうまくいかない人は、自分でレンガを積む努力をしないまま、信頼関係が積み上がらないのを「相手のせい」と思う人が多いのです。

 特に「医師 - 患者」関係においては、「信頼関係の構築は全部医者がやってくれるのが当然」と思っている人が少なくありません。

 職場、恋愛、夫婦においても同じです。「上司は何もしてくれない」「夫(妻)は何もしてくれない」「彼(彼女)は何もしてくれない」と、あなたは相手を責めますが、あなたは信頼のレンガをどれだけ率先して積んでいるでしょうか。

 信頼関係の構築は共同作業です。人間関係がうまくいかない、信頼関係がうまくいかない場合、「相手に100%責任がある」ということはないのです

 あなたにも、少なからず「原因」や「責任」があるはずです。

 そこを修正し、自分から信頼のレンガを積む努力をしていかないと、信頼関係は一向に積み上がらないのです。

心の橋がかかる期間は「3ヶ月以上」

 心理学では、信頼関係の構築を「ラポール形成」と言います。

 ラポールとはフランス語で、「橋をかける」「懸け橋」という意味です。ラポールが形成されると、「心が通い合っている」「心の悩みを打ち明けられる」と感じる状態になります。「橋」を通して、心が行き来するイメージです。

 さて、ラポールが形成されるのに、どのくらいの時間がかかるのでしょうか。目安として、「3ヶ月〜数ヶ月」という期間が一般的です。カウンセリングを開始し、3ヶ月くらいまでに、「ディープな悩みを話し合える状態」になっていると、カウンセリングは非常にうまくいっています。

 あなたが新しい職場に入って、2ヶ月後もうまく職場に馴染んでいないとしても、それは「普通」なのです。あなたが悪いわけではなく、上司や周囲の人が悪いわけでもありません。信頼関係の構築には、もう少し時間がかかります

「3ヶ月」は1つの目安なので、あまり焦らずに、じっくりと信頼関係を構築してください。

樺沢紫苑(かばさわ・しおん)
精神科医、作家
1965年、札幌生まれ。1991年、札幌医科大学医学部卒。2004年からシカゴのイリノイ大学に3年間留学。帰国後、樺沢心理学研究所を設立。「情報発信を通してメンタル疾患、自殺を予防する」をビジョンとし、YouTubeチャンネル「樺沢紫苑の樺チャンネル」やメルマガで累計50万人以上に精神医学や心理学、脳科学の知識・情報をわかりやすく伝える、「日本一アウトプットする精神科医」として活動している。
コロナ禍に22万部のベストセラーとなった著書『精神科医が教える ストレスフリー超大全』(ダイヤモンド社)のほか、シリーズ80万部の大ベストセラーとなった著書『学びを結果に変えるアウトプット大全』『学び効率が最大化するインプット大全』(サンクチュアリ出版)など30冊以上の著書がある。