グローバルな産業景気の動向が敏感に反映される国際商品市況は、景気の先行指標としても注目される。特に銅市況が示す方向は的中率が高いとされ、「ドクター・カッパー(銅博士)」と呼ばれるほどである。
同じ金属でも、金(ゴールド)とは、かなり異なる値動きをする。金は、価値の貯蔵手段として世界中で認められており、無国籍通貨・実物通貨と呼ばれる存在だ。つまり、景気の不振、悪政、戦争などによって、管理通貨(円やドルやユーロなど各国通貨)の価値に対する信頼度が低下してインフレになるときのリスク回避先として考えられやすい。
また、各通貨建てで定義された金融資産の価格が下落するときのリスク回避先として選ばれる場合もある。純粋な資産として、景気動向よりもリスク動向を反映して金市況は変動する傾向がある。
これに対して、銅市況は景気に敏感であり、かつ、そのよい先行指標となる。
その理由を挙げると、第一に、エレクトロニクス製品、自動車、住宅、産業機械など変動が大きく景気全般を左右する産業分野が需要先になっていることである。銅は、電気伝導性のよい部材として必要なのである。
第二に、それらの生産活動・販売活動・建設活動に先立って部材の調達が行われ、その段階で銅の需給が変化することである。
第三に、貯蔵しやすいので、その価格に実需家や投資家の銅需給の先行きへの観測が反映されやすいことだ。これらの要因を反映して、銅市況の騰落は景気の変動に先行した結果になることが多い。