2011年にブルガリアの首都ソフィアを出てフランスに向かったニコ・アレクシエフさん(29)は、もはや本国に戻って生活することはないだろうと思っていた。だが、西欧諸国に出稼ぎに来ていた数万人の外国人労働者と同じように新型コロナウイルス禍で職を失ったアレクシエフさんは、2020年6月に帰国した。それから1年余り、ソフィアで就職したアレクシエフさんに再び国を離れる考えはもうない。欧州では数十年にわたり、東欧から大量の移民が西欧へと流入した。だがここにきて、このトレンドに反転の兆しが出ている。エストニアでは2017年以降、本国への帰国者が国外への移住者を上回っている。ポーランドは2016年以来、移民流入が純増となっており、この傾向はパンデミック(世界的な大流行)で加速した。1990年以降、市民の約4分の1を失ったリトアニアでは昨年、人口が小幅増に転じた。長年続いていた若者の国外流出にコロナ禍で歯止めがかかったためだ。