米ニューヨーク州北部在住のローラとデービッド・ガナー夫妻は、27歳の息子のスティーブンさんがオピオイドの過剰摂取で死亡したことを知ったとき、悲しみに打ちひしがれた。しかし、それを全く予期していなかったわけではなかった。夫妻は10年以上、息子に薬物依存やとっぴな行動をやめさせようと苦闘していた。
夫妻はスティーブンさんが2020年に死去した後、慰めを求めて「ドナー・シブリング・レジストリー」に登録した。これは、精子や卵子の提供者(ドナー)と提供された精子や卵子で妊娠した人をつなぐウェブサイトだ。スティーブンさんと同じく、バージニア州フェアファクスの精子バンクが販売した特定のドナーの精子によって妊娠し、生まれた子どもたちの母親や父親と連絡を取りたいとの思いからだった。
ドナー1558番の精子バンクのプロフィールには、ギターを演奏し、ホッケーをプレーする金髪で茶色い瞳の大学生と記載されていた。夫妻は、ドナー1558番が提供した精子で生まれた他の子どもたちの写真に、スティーブンさんの面影が垣間見えることを切望していた。また、スティーブンさんの生物学上の異母きょうだいの親に、スティーブンさんが統合失調症だったことを伝えたいとも思っていた。統合失調症は幻覚や妄想を引き起こす精神疾患で、遺伝する可能性がある。
「他の親御さんにも伝える義務があると感じた」とローラさんは述べ、スティーブンさんの異母きょうだいを18人特定したと話した。
他の親とのやり取りの中で、夫妻はドナー1558番について気掛かりな新情報を得た。ハンサムでスポーツと音楽好きのその学生は統合失調症と診断され、2018年に46歳でオピオイドの過剰摂取で死亡していた。また、ローラさんが後にドナー1558番の母親と連絡を取ったところ、彼がかつて行動面の問題で入院していたことを知った。理由は不明だが、彼は精子提供前に記入した質問票でそのことを開示していなかった。