2050年、あなたは70歳だとしよう。35歳の時と変わらず、トレーニングを終えても元気はみなぎっている。肌にはシワひとつない。眼鏡をどこに置いたか思い出す必要もない。正常な視力のままだからだ。頭も以前と同じくさえ渡っている。人間はいずれ長生き(しかも健康)が当たり前になる――それがエイジング(老化)研究という急成長する分野の考え方だ。科学者らは、動物実験で得られた長寿に関する興味深い知見を応用し、人類の老化プロセスを遅らせたり、予防したり、さらには反転させたりする薬を開発しようと取り組んでいる。老化を止める有力候補には、二つの身近な薬剤がある。糖尿病治療薬としてよく使われる「メトホルミン」と、臓器移植で拒絶反応を抑えるために用いられてきた「ラパマイシン」だ。いずれも動物実験で長寿効果が確認されており、また両者とも細胞の老化に関連する分子プロセスを標的にしている。