名医やトップドクターと呼ばれる医師、ゴッドハンド(神の手)を持つといわれる医師、患者から厚い信頼を寄せられる医師、その道を究めようとする医師を取材し、仕事ぶりや仕事哲学などを伝える。今回は第44回。現代に生きる日本人を悩ませる「疲労」と「うつ病」という二大問題のメカニズムを世界で初めて解明した、東京慈恵会医科大学ウイルス学講座教授の近藤一博氏を紹介する。近藤教授が見いだした“ウイルスの使命”とは。(医療ジャーナリスト 木原洋美)
世界初、疲労とうつ病の
謎を解き明かした
現代人の健康をおびやかす二大問題「疲労」と「うつ病」。世界の中でも日本人は特に、疲労やストレスによるうつ病患者や自殺者の数がトップクラスに多いという。そのことは、「過労死」という単語が「KAROSHI」としてそのまま英語になっていることからもうかがい知れる。
東京慈恵会医科大学ウイルス学講座の近藤一博教授は、この二大問題のメカニズムを世界で初めて解明するという快挙を成し遂げた。
疲労については
・原因物質を発見した
・「疲労感」と「労働や運動による生理的疲労」からなる疲労のメカニズムを解明し、従来「疲労回復効果がある」と思われていた物質のほとんどは「疲労感を軽減させる物質であり、疲労回復効果はない」ことを明らかにした
・疲労を客観的に測る技術を発明した
……というように、従来の常識を覆してしまった。
また、うつ病についても
・ほとんど全ての人に潜伏感染している「ヒトヘルペスウイルス6(HHV-6)」の遺伝子「SITH-1(シスワン)」を発見し、これがストレスレジリエンス(ストレスを跳ね返す力)を低下させることで、うつ病を発症させることを見いだした
・「うつ病は心の弱さや性格が原因」という説は間違いであることを明らかにした
・SITH-1を持っている人がうつ病を発症する確率は持っていない人の12.2倍、患者5人中4人はSITH-1を持っていることを明らかにした
……など、快進撃中なのである。