数十年にわたり経済成長を最優先に掲げてきた中国指導部が、ここにきて社会制度改革に本腰を入れ始めた。その取り組みの背後に大きく立ちはだかるのが「三座大山(三つの大きな山)」だ。三座大山とは、共産党の革命家らが帝国主義、封建主義、縁故資本主義の悪徳について言及する際に用いた表現を現代風にもじったもので、住宅、教育、医療に絡む費用が跳ね上がっている問題を指す。これらの費用高騰に対する懸念は中国の家計に限ったものではなく、米国でも多くの世帯にとって共通の悩みとなっている。しかし、中国では爆発的な高度成長を遂げた過去40年間に都市部の富裕層と農村部の貧困層の格差が大きく広がった。習近平国家主席はこうした市民の暮らしぶりに関わる問題を自身が掲げる「共同富裕(共に豊かになる)」の中核に据え、社会の底辺に置かれた人々の守護者として共産党の正統性を高め、社会不安を回避することを狙っている。