SNSが誕生した時期に思春期を迎え、SNSの隆盛とともに青春時代を過ごし、そして就職して大人になった、いわゆる「ゆとり世代」。彼らにとって、ネット上で誰かから常に見られている、常に評価されているということは「常識」である。それゆえこの世代にとって、「承認欲求」というのは極めて厄介な大問題であるという。それは日本だけの現象ではない。海外でもやはり、フェイスブックやインスタグラムで飾った自分を表現することに明け暮れ、そのプレッシャーから病んでしまっている若者が増殖しているという。初の著書である『私の居場所が見つからない。』(ダイヤモンド社)で承認欲求との8年に及ぶ闘いを描いた川代紗生さんもその一人だ。当連載では、「承認欲求」という現代社会に蠢く新たな病について様々な角度から考察してきたが、今回は特別に、ライター・川代氏のスキルについて(本編は書籍には含まれていない番外編です)。

未知のジャンルでも本を10冊読めば大枠を掴むことができるPhoto: Adobe Stock

「つまらない」と感じる原因は「知らない」から発生している

「未知のジャンルでも本を10冊読めば大枠を掴むことができる」

数年前だろうか、上司からそう教わって以来、「つまらない」「興味ない」の判断は本を10冊読んでからすることにしている。

その習慣を続けていると、面白いことがわかった。

「つまらない」と感じる原因は「知らない」から発生していることがほとんどで、10冊分の知識をインストールしてそれでも「つまらない」と感じることはほぼない、ということだ。

たとえば、ライターを目指す人から、
「まったく興味のない分野について書かなきゃいけないときはどうしたらいいでしょう?」
という質問をされることが結構あるのだが、いつも
「本を10冊読めば解決します」
と答えるようにしている。

信じられないかもしれないけれど本当にそうで、たとえば、以前「著作権」について勉強しなければならない機会がやってきたことがあった。私は法律について興味を持ったことなんて一度もなかったから、どうしたもんかと困っていたのだけれど、とりあえず本論を突いているであろう本を10冊ピックアップして読み込んでみたら(じっくり読み込む必要はなく、ざっと目を通す程度でいい)、突然、視界がパッと開ける感覚を覚えた。学ぶのが急に面白くなった。

なんというか、知識が「上滑り」している感覚がなくなってきて、知識に「体温」がともるのだ。

だんだんと、生身の人間がそこにいるようなあたたかさを感じるようになってくるのである。

そういう経験が何度もあるから、もしかして「苦手」「弱点」という判断も、ある程度続けてから判断してもいいんじゃないか、と思うようになった。