SNSが誕生した時期に思春期を迎え、SNSの隆盛とともに青春時代を過ごし、そして就職して大人になった、いわゆる「ゆとり世代」。彼らにとって、ネット上で誰かから常に見られている、常に評価されているということは「常識」である。それゆえこの世代にとって、「承認欲求」というのは極めて厄介な大問題であるという。それは日本だけの現象ではない。海外でもやはり、フェイスブックやインスタグラムで飾った自分を表現することに明け暮れ、そのプレッシャーから病んでしまっている若者が増殖しているという。初の著書である『私の居場所が見つからない。』(ダイヤモンド社)で承認欲求との8年に及ぶ闘いを描いた川代紗生さんもその一人だ。当連載では、「承認欲求」という現代社会に蠢く新たな病について様々な角度から考察していく。今回は、承認欲求に追われて突っ走るうちに孤独になってしまった著者のつぶやきである(本編は書籍には含まれていない番外編です)。
周囲の結婚ラッシュで突如不安になる日々
アラサーである。
紛うことなきアラサーである。今年で29歳。27歳くらいまではまだまだヒヨッコの気分が強かった。
というよりも、年齢の感覚があまりなかった。それよりとにかく仕事を軌道に乗せるのに必死で、歳を重ねることについてなんてほとんど考えられていなかった。し、考える必要もないと思っていた。
だいいち、私はもともと「はやく大人になりたい」と思っていたタイプである。学生のころから「まああなたはまだ若いからね」と大人から優しく諭されるのがなんとなく嫌で、はやく一人前の大人と認識される年齢になってさっさと幅を利かせられるようになりたいと思っていた。
ところが、である。
「30代」がこちらに向かいドドドドと走る音が聞こえてくるようになったある日、突然私の目の前が真っ暗になった。くらっとした。青天の霹靂。突如訪れる天啓。寝耳に水(ちょっと違うか)。
まあとにかく、雷がズガーンと脳天を貫いたがごとく衝撃が走り、私は突然「このまま30歳になって大丈夫か症候群」になってしまったのである。いやー、なんだこの不安。いままでそんなこと全然感じたことなかったのに。
で、まあここまで仰々しく書いておいて何があったんやという話なんですが、結論から言うとですね、インスタに学生時代の友達の結婚式の様子が流れてきたのがきっかけだった。
私と同年代の人ならわかると思うがとにかく28歳・29歳というのは結婚ラッシュに次ぐラッシュで、おまけに最近はコロナ禍でずっと結婚式を延期していた人たちが「いや、もうこのままじゃいつ結婚式できるのかわからんから、仲の良い人限定でやっちゃおう」的に思ったからなのかどうかはわからないが、結婚式の写真がやたら流れてくるのである。毎週土日にインスタのストーリーを見れば、「結婚しました」だの「〇〇の結婚式! ドレス姿きれいすぎた……」だの「チーム〇〇の同窓会みたいになった笑」だのとやたらめったら結婚式の様子が流れてくるのである。
くわえて、私は大学時代の学部の女子比率が高かったことや、中高一貫の女子校に通っていたこともあって、インスタで繋がっているのも女友達がほとんどなのだ。そのころの学友たちが大人っぽい美人になって華やかなドレスやワンピースを着て一堂に会している様子を見ると、いやー、時が流れるのは早いなあ、みんな全然変わらないなあ……なんて呑気に考えていた。
で、人生の大きな分岐点となったその日も、私は夜ご飯のあとソファに寝転びながらダラダラとインスタを見ていた。ふと、ストーリーに写真が流れてきた。大学の旧友の結婚式の様子だった。
おお、あの子も結婚したのかあ、そういや会ったばかりの頃は私もあの子も、クラスメイトみんなで結婚できる気がしないとか言ってたなあ……と思い出にひたりながら微笑ましくその様子を眺めていたのだが、ふと出てきたのは見知った顔たちの集合写真だった。どうやら、その子が卒業後も仲良くしているメンバーたちで集まって写真を撮ったようだった。
ああ、懐かしいなあと思いつつスルーしようと思ったのだが、ふと、ひとつの考えが頭をよぎった。
あー、私、友達の結婚式、マジで呼ばれなくなっちゃったなあ。